職場に攻撃的な人がいて困っています!

アプキャリ

現代は人間関係の悩みがあふれる時代

幸か不幸か、ひとは一人では生きてゆけません。生まれた時から親という他者と付き合い、学校では友人や教師、社会人になっても上司や同僚や相手先といった他者と付き合い続けなければなりません。
特に現代はコミュニケーションの手段が多様化したため、交流する相手も複雑化しています。そうしたなかで、人間関係に悩みを抱える現代人が増えているのも事実です。
こころの健康を保ちながら元気に生き抜くためには、確かな方法論が不可欠です。本稿では、「職場にいる攻撃的な人」に対処する方法をケーススタディを通して考えていきます。

職場に攻撃的な人がいて困っています

今回お悩みを寄せてくださったのは大手企業に勤務するA子さん。大学卒業後に現在の会社に就職。勤務を始めて5年目の若手です。お悩みを具体的に見てみましょう。

もうやめたいです!

はじめまして、こんにちは。私はB社に勤めて5年目で、ずっと営業部にいたのですが、昨年から配属が変わって総務部に所属しています。総務部の上司のことでご相談させてください。
上司のS係長(女性)は、みるからにバリバリのキャリアウーマンで、怖そうな人なので私も最初から警戒していました。しばらく様子を見ていたのですが、あるときS係長に呼ばれてデスクまで行くと、私の作成した書類についてのダメ出しが始まりました。
書類自体は作成手順に沿って作っていたのですが、ある部分の数字にちょっとした計算ミスがあり、そのことについて、まくしたてるように怒鳴りつけるのです。『こんな計算子どもでもできる』とか、『いったい、あなたはやる気があるのかしら』などと、侮辱するような言葉が出てきて、こころの底から嫌になりました。
その後も、大きな会議で私の応答がおぼつかなかったときや相手先との連絡がうまくいかずに仕事が数時間遅れたときにも、数時間にわたって同僚に見えるところで叱責されました。
S係長が怒るのは私だけではなくてみんな困っています。いま、私はこのS係長の顔を見るのも嫌で、会社をやめたいと思い始めています。どうしたらよいでしょうか。」

もっともカンタンな解決策

A子さんの悲痛な叫びに、同情を禁じ得ません。A子さんに似たような相談を私は複数の方から受けています。A子さんからすれば、一生懸命働いているなかで起こってしまう小さなミスなわけですが、S係長はそこをあげつらうかのように、同僚の前で叱責。「子どもでもできる」「やる気があるのか」などといった、人格を否定する発言まで出てきています。会社に行くのも本当につらい状態でしょう。みなさんだったら、どのように対処されるでしょうか。
職場に限らず、人間関係の悩みのほとんどは見方によってはハラスメントの場合があります。A子さんの事例も、場合によってはハラスメントとして、社内外の相談窓口などに相談するのがよいかもしれません。これも対処のひとつです。
また、職場を変えてしまうことも手っ取り早い対処法のひとつです。A子さんの場合、問題の怒った場所が「職場」という金銭が発生するところですので、悩みを公表したり、悩みに対処するということによって、金銭的な不利益につながるのではないかという思いこみを持ちやすく、問題に対処しづらくなってしまう心理的な要因の一つとなりがちです。
ここで、皆さまに強く認識していただきたいことがあります。それは、現代の日本では「飢え死に」をするような事態はめったに起こらないということです。日本は失業保険や生活保護、再雇用のための情報提供や職業訓練などの公的サービスが充実しています。もしも失職に対する不安があれば、お近くのハローワークを訪れて、失業した場合に受けられる公的なサービスについて、ひと通りの説明を受けてみてください。きっと、気が楽になると思います。
仮に失職しても飢え死にしないのだとすれば、嫌な上司がいる会社に勤め続ける理由はありません。「いま自分が辞めたら会社が困る」という類の言い分は人を雇う側の論理ですので内面化しないように気をつけましょう。ですので、極論を言えば、いますぐ仕事をやめてしまうことが手っ取り早い解決の方法です。

攻撃性ってなんだろう?

とはいっても、すぐには辞められない方もいらっしゃるかもしれません。そこで今度は、会社に残りながら、S係長とうまくやる方法を考えてみましょう。そのために、ひとが攻撃的になってしまう理由について考察するところから始めましょう。
生物学の知見によると、ひとを含む動物は本来的に攻撃性を持っています。攻撃性はホルモンバランスの影響で顕在化し、縄張りや食糧を確保するため、または、生殖行動のために攻撃性を発揮するようにプログラミングされています。
しかし、人間は「社会的な動物」であると言われていて、本能の赴くままに行動する動物とは区別されています。その理由は、人間は攻撃性によらずに「社会」を営むことが出来るためです。
一言でいえば、攻撃性を出さずに生きていけるように進化したのが人間であるということになります。この意味で、あなたに攻撃性を出しているS係長はひとではないということになります。
ただ、いくらひとでも攻撃性が出てしまう場合もあります。発達心理学によれば、次の2つの場合には、攻撃性が出てしまうことがあるのです。1つ目は、脳の機能として怒りやすい特質を持って生まれている場合です。2つ目は、その人が葛藤を抱えており、その葛藤を処理するために攻撃性を使う場合です。ここでは特に後者について取り上げます。
まず、ひとが葛藤を抱える有名な例として、役割に関する葛藤があります。お子さんがいらっしゃる方はお分かりかもしれません。例えば、スーパーで買い物をしている最中にあなたのお子さんが商品の陳列棚をひっくり返してしまったとします。すると、その時に子どもに対して発するべき言葉は、以下のそれぞれの役割に応じて、いくつかの可能性が考えられます。
その場でのあなたには「保護者」、「一人のひと」、「その場に居合わせた一人のひと」といった複数の役割が負わされています。そして、それらの役割のすべてが、それぞれの役割に合致した言葉がけを要求して来るため、あなたのこころには葛藤が生じます。もちろん、すべての役割に応じた言葉をひとつずつ並べて言うようなことをしていれば人格が分裂してしまいます。
このような際に、子どもをたたいたり、「まったくもう!」や「なにやってんのよ!」といった発言をする、つまり、攻撃性を表すことによって上記のような役割の葛藤を回避する場合があるのです。これは、人格の分裂を回避するための人間の本能的な振る舞いとして起こり得るのです。このように考えますと、もしかするとS係長の生活上では、そうした役割上の葛藤が多数生じているのかもしれず、あなたはそのとばっちりを受けているだけなのかもしれません。いずれにしても、かわいそうな人だなと思いながら、叱責を聞き流せばよいのです。

困ったときは認識を変えてしまう

ここまでくれば、S係長はもう単なる「うるさいおばさん」と認識できるはずです。このように、相手に対する認識の枠組みを変えることを再解釈による合理化と言います。
人間関係の悩みに直面した際には、大きく3つの選択肢があります。①その人から離れる(今回の場合には転職です)、②相手を変える(S係長を善人にする)、③自分の認識を変える(相手は変わらないが、自分の認識を変えることによって無害化する)、この3つです。
②の相手を変えるという選択肢は、なかなか難しいですよね。大人にもなれば人格が形成されてしまっていますので、言って聞かせても治るものではないでしょうし、本人に短所を気付かせるような状況を設計するとなると、それは教育的なプロセスとなり、さらに複雑な対処法です。
そこで、③の相手に対する自分の認識を変えてしまうという選択肢が重要になるわけです。今回の一連のご回答も、実は読者のみなさまの認識を変化させることに主眼を置いてきました。どんな嫌な人も私たち自身の認識しだいで無害化することができます。面従腹背という言葉があるように、「かわいそうな人だなあ」と思いながら適当に話を聞いておけばよいわけです。